初めての体験というのは、いつでも少し怖い。
初めての自転車、初めての海外旅行、初めての一人暮らし。どれもドキドキするが、一度経験してしまえば「なんだ、こんなものか」と思うことが多い。
しかし、日本では未だに多くの人が「初めてのアート購入」を経験していない。
それどころか、アートを買うという発想すら持っていない人がほとんどだ。
世界でもっとも美術館に行く人が多い国なのに、アートを買う人の割合は先進国でも最低レベルだと言われている。
なぜだろうか?
理由はいくつか考えられる。「高そう」「難しそう」「知識がないと買えなさそう」—— そんな漠然とした不安が、アートを買うという未知の体験に足を踏み入れることを阻んでいるのだろう。
しかし、考えてみてほしい。人は、ワインを買うときにソムリエの資格が必要だろうか?
音楽を聴くのに楽譜を読める必要はあるだろうか? 旅行をするときに、その国の歴史を完全に理解している必要があるだろうか?
どれも直感で「これがいい」「楽しそう」と思ったからこそ体験するのではないだろうか。
アートを買うのも、それと同じだ。
事前に勉強する必要はない。
「この絵、なんとなく好き」「部屋に飾ったら気持ちが良さそう」「このアーティスト、なんだか気になる」—— そんなシンプルな直感で十分なのだ。
では、アートを買うことの素晴らしさとは何か?
まず、アートを買うことは「所有する喜び」につながる。
お気に入りの洋服を着ると気分が上がるように、自分で選んだアートが家にあると、毎日の生活が少し豊かになる。
それは単なるインテリアではなく、自分の感性で選び取った「物語のある一枚」なのだ。
そして、アートを買うことは「時間とともに深まる体験」でもある。
美術館で観るアートはその瞬間の感動で終わるが、家に飾るアートは日々表情を変える。
朝の光の中で見ると爽やかに感じるかもしれないし、夜の間接照明の下では深みを増すかもしれない。季節によって、気分によって、同じアートが違った姿を見せるのだ。
さらに、アートを買うことは「アーティストを支える行為」でもある。購入したお金の一部が、アーティストの次の制作活動の資金になる。
あなたが買った作品が、新たな作品を生み出すきっかけになるのだ。アートを買うという行為は、文化を未来へつなぐことでもある。
実際に、アートを買った人は皆こう言う。「もっと早く買えばよかった」と。
また、アートを買うことは単なる趣味嗜好ではなく、資産形成の側面も持っている。
最初は面倒に感じるかもしれないが、株を買うのと同じように、アートの価値を調べるうちにその世界にのめり込んでいく人が多い。
特に収集癖のある人は、一枚購入すると次々と増え、やがて部屋に飾り切れなくなり、倉庫を借りて管理するようになる。
そして気づけば、エクセルシートでコレクションの情報を整理し、作品の価値を分析している。これはもはや趣味を超えた「知的投資」の領域だ。
一方で、女性のコレクターは空間を大切にする傾向があり、部屋を美しく整えるために作品を購入し、ある程度で満足することが多い。
対して男性は、コレクションを増やすこと自体を楽しみ、次第に「投資」としての視点も持つようになる。
だからこそ、一度だけでいい。アートを買うという体験をしてみてほしい。
美術館で見た作品を思い出すように、雑誌で紹介されていたアーティストの名前を気にするように、まずは一枚の作品を手に入れてみる。
それは、他のどんな買い物とも違う、人生を豊かにする特別な体験になるはずだ。
2025年3月14日(金) ~ 4月5日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日3月14日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:3月14日(金)18:00-20:00
※3月20日(木)は祝日のため休廊となります。
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F